大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和44年(ラ)602号 決定 1969年12月22日

抗告人 山田進(仮名)

相手方 山田やす(仮名) 外五名

主文

原審判を取り消す。

被相続人山田孫一郎の遺産のうち原審判別紙第二記載の金員二〇六万九、七五三円は、抗告人が金四六万八、六三九円(内金一一万八、八〇〇円は既に取得済み)、相手方山田やすが金六〇万〇、四一九円(内金二〇万円は既に取得済み)、その他の相手方五名が各金二〇万〇、一三九円(各内金七万五、〇〇〇円は既に取得済み)を、それぞれ取得する。

前記被相続人の遺産のうち原審判別紙第一(ただし、同別紙の鑑定価額、同合計の記載を消除する。)記載の宅地中原審判別紙図面表示の<1>の部分は相手方山田やすを除く相手方五名の各持分五分の一の共有とし、同図面表示の<2>の部分並びに原審判別紙第一記載の建物は相手方山田やすの単独所有とする。

相手方山田やすを除く相手方五名並びに抗告人は相手方山田やすに対して、それぞれ金六、五五五円を支払え。

理由

一、抗告理由中二及び一二の3を除くその余の抗告理由について。

所論に徴し記録を検討するも、所論の点に関して原審判にこれを取り消すべき違法があるものとは認められない。

二、抗告理由一二の3について。

原審は、本件遺産中不動産について審判時(昭和四四年七月一一日)の価額として、宅地は金一七八万八、〇〇〇円、建物は金二三万六、〇〇〇円、合計二〇二万四、〇〇〇円と認定し、この価額に依拠して本件遺産の分割をしたが、原審における鑑定人坂井守の鑑定の結果によれば、右価額は審判時より約一年前の昭和四三年七月二九日現在の鑑定評価額であること、右宅地の相続開始直後(昭和四一年三月二九日)の価額は金一三四万一、〇〇〇円で、昭和四三年七月二九日現在の価額の七五パーセントであるが、その地価が年々上昇していること、又、右建物の相続開始直後の価額は金三六万二、〇〇〇円(坪一万二、七六〇円)であつたが、昭和四三年七月二九日現在では経済的残存耐用年数が七年から五年に、物理的、機能的、経済的減価率が四五パーセントから五〇パーセントに各変動したため、その価額が金二三万六、〇〇〇円(坪八、三二〇円)に減じたものであることが明らかである。右鑑定結果によれば、前記昭和四三年七月二九日から約一年を経過した原審判時の右宅地建物の価額には、昭和四三年七月二九日当時の価額に対し少なからぬ変動を生じているものと認めるのが相当であるところ、原審判はこれを考慮に入れずに昭和四三年七月二九日現在の鑑定評価額をそのまま基準として遺産の分割をなしているから、論旨は理由があり、この点で原審判は取り消すべきものと認める。なお、抗告理由二に関する判断は、次の自判において示す。

三、本件においては、記録に照らし、当審で自ら審判に代わる裁判をなすのが相当であると認める。よつて考えるに、当裁判所も本件記録によれば、本件の被相続人並びに相続人らの状況、相続人らの相続分、遺産(ただし、不動産の価額の認定を除く。)、相続人ら相互の関係、本件遺産分割の方針について、原審判三枚目表九行目に「昭和三八年三月三〇日」とあるのを「昭和二六年九月」に、同三枚目裏一一行目に「東京外事専問学校」とあるのを「東京外事専門学校」に、同五枚目裏三行目から四行目に「他の相続人を相手方として、本件遺産分割を申立てているので、」とあるのを「本件不動産について他の相続人との共有を望んでいないので、」にそれぞれ改めるほかは、原審判理由IないしVI記載のとおり認定判断するので、これを引用する。

次に、本件遺産中の宅地建物の評価の点であるが、現在においては、前記昭和四三年七月二九日現在の評価額に対し、宅地については一〇パーセント増額、建物については残存耐用年数の一年減、減価率二パーセント増の修正を加えるのを相当と認める。そうすると、宅地は金一九六万六、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨)、建物は金一八万二、〇〇〇円(坪六、四〇〇円)となる。

しからば、結論として、相続人らの取得分は次のとおりとなる。

(1)  抗告人

金員

遺産総額四二一万七、七五三円の九分の一に相当する金四六万八、六三九円(内不動産を取得しない代りの分金二三万八、六六六円)。ただし、内金一一万八、八〇〇円は既に取得済みであるので、実際に取得すべき額は金三四万九、八三九円である。

(2)  相手方山田やす

(イ)  金員

金員総額二〇六万九、七五三円の三分の一に当る金六八万九、九一八円から、抗告人が不動産の代りに取得する金二三万八、六六六円の八分の三に相当する金八万九、四九九円を差し引いた金六〇万〇、四一九円。ただし、内金二〇万円は既に取得済みであるので、実際に取得すべき額は金四〇万〇、四一九円である。

(ロ)  不動産

原審判別紙第一記載の建物及び宅地中原審判別紙図面に表示の<2>の部分を各単独所有する。

(3)  その他の相手方ら五名

(イ)  金員

金員総額二〇六万九、七五三円の九分の一に当る金二二万九、九七二円から、抗告人が不動産の代りに取得する金二三万八、六六六円の八分の一に相当する金二万九、八三三円を差し引いた各金二〇万〇、一三九円。ただし、各内金七万五、〇〇〇円は既に取得済みであるので、実際に取得すべき額は各金一二万五、一三九円である。

(ロ)  不動産

原審判別紙第一記載の宅地中原審判別紙図面に表示の<1>の部分を各持分五分の一の共有とする。

四、よつて、審判手続費用中、原審において相手方山田やすが支出した鑑定費用合計金五万九、〇〇〇円について家事審判法第七条、非訟事件手続法第二七条を適用してその負担を定めることとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 岸上康夫 裁判官 田中永司 平田孝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例